調達の概要
2026年4月23日、中国のクラウドMES企業黑湖科技(Blacklake)が約10億元(創業以来6回目)のDラウンド調達を完了しました。投資家には国香資本(商汤系)、上海国投先導基金、智盈投資(复星系)、国家人工智能産業投資基金、华夏智擎创业投资基金が名を連ね、FAは华兴资本です。
財新の報道によれば、同社はすでに黒字化済みで、売上高成長率は年60%超。調達資金は工業AIアプリケーションの実装加速とグローバル展開に充てるとしています。
なお同社は自社ブログでIDCレポートを引用し、クラウドMES細分市場でシェア52.7%と主張していますが、これはベンダー自社発信の数字であり、本稿では参考情報にとどめます。
背景──「サブスクMESで黒字化」した稀有な事例
黑湖科技はクラウドネイティブのMESをサブスクリプションで中小工場に販売するモデルで成長してきました。中国のソフトウェア業界では、クラウド転換を先に完了した金蝶が2025年に通期黒字化する一方、用友が大型赤字を続けるなど、「サブスクへ転換できたか」が明暗を分けています。黑湖はMES領域でその勝ち組に位置します。
もう一つの背景は国家戦略です。国家AI産業投資基金の出資は、中国においてMES──製造現場の実行データを握るソフトウェア──がAI戦略の資産として扱われていることを示します。2026年1月公布の「人工智能+制造」実施意見が掲げる工業インテリジェントエージェント1,000個などの目標とも整合する動きです。
日本のMESユーザー・検討中の企業への影響
直接の影響は中国拠点を持つ企業に生じます。在中日系工場のMES選定で、黑湖のような国産クラウドMESは価格(国産勢は外資の概ね1/3の価格帯とされます)とスピードで有力な比較対象になっており、本社標準の外資MESとの二重検討が今後も増えるとみられます。
日本市場への含意もあります。「クラウドMESをサブスクで中小製造業に売って黒字化した企業」は日本にほぼ存在せず、個別受託開発が主流のままです。黑湖の調達は、日本のMES市場の構造が国際的には例外的であることを改めて示しました。
同社の事業モデル分析は黑湖科技はなぜ黒字化できたのかの記事を、サブスク移行の全体像は中国MESは「請負」から「サブスク」へ移行したの記事を、ベンダー勢力図は中国MESベンダー地図の記事を参照してください。
