何が発行されたのか
ANSI/ISA-95.00.01-2025(IEC 62264-1 Mod)Enterprise-Control System Integration − Part 1: Models and Terminology が、2025年4月10日に発行されました。2010年版以来15年ぶりのPart 1改訂です。
ISA-95はMESの責任範囲そのものを定義する標準です。その最も基礎的な部分(モデルと用語)が15年ぶりに更新されたということは、MESの設計前提が公式に更新されたことを意味します。
改訂で取り込まれた4点
ISA公式リリースが挙げているのは次の内容です。
- エンタープライズ機能の精緻化と、エンタープライズ領域/製造・制御領域の境界の明確化
- モジュラー/コンテナ化アーキテクチャへの対応(オンプレミス・クラウド・ハイブリッド)
- メタデータと標準ベースのコンテキスト化によるデータ中心アプローチ
- 標準化された統合インターフェース
標準委員会議長のChristian Monchinski氏は、改訂版が「これらのシステム間の標準化された統合インターフェースの重要性を再確認し」「製造オペレーション情報を表現するための共有オントロジーとセマンティックモデルを提供する」と述べています。
「ピラミッド」から「疎結合なコンポーネント群」へ
日本語の解説記事で繰り返し使われる「オートメーションピラミッド(レベル0〜4)」という図は、いまも階層の責任範囲を理解するには有用です。しかし2025年版が新たに示したのは、階層を上下に貫く一本のスタックではなく、共通の意味モデルを持つ疎結合なコンポーネント群というアーキテクチャ像です。
この変化が実務にもたらす影響は3つあります。
1. Unified Namespace が「標準外の流行」ではなくなった
MQTTブローカを中心に据え、すべてのシステムが同じ名前空間を参照するUnified Namespace(UNS)というアーキテクチャは、これまで「標準に書かれていない新しいやり方」として扱われることがありました。2025年版がメタデータによるコンテキスト化と共有セマンティックモデルを明示的に取り込んだことで、UNSは標準の思想に沿った実装のひとつとして説明できるようになりました。
実際、Critical Manufacturingは製品にUnified Namespace MQTTストリーミングを実装しており、RockwellのFactoryTalk ResilientEdge(2026年6月発表)も「共有された生産モデル」を掲げています。
2. コンポーザブル MES が標準側から追認された
再利用可能なモジュールを組み合わせてMESを構成する「コンポーザブル MES」は、2026年時点でAVEVA(Composable MES Content 2.0)、Tulip、42Q、iBase-t、Siemens(Opcenter X を modular MOM と定義)が製品戦略として掲げています。モジュラー/コンテナ化アーキテクチャへの対応が標準に入ったことは、これらを「標準に反する独自路線」と評価する根拠がなくなったことを意味します。
3. 「標準的な構成です」という説明の意味が変わった
提案書に「ISA-95に準拠した標準的な階層構成」と書かれていた場合、それが2010年版の理解なのか2025年版の理解なのかで、想定されるアーキテクチャは相当違います。どちらの版を前提にしているかを確認するのが、2026年以降の読み方です。
関連する標準の状況
| 標準 | 最新状況 |
|---|---|
| B2MML / BatchML | Version 7(2020年11月24日、MESA International)。ISA-95/IEC 62264の2018/19年版に対応し、初のJSONスキーマ定義を提供。GitHubで公開管理 |
| MTConnect | v2.5.0(2026年1月5日公開)。OPC UAとのコンパニオン仕様により競合ではなくマッピングで共存 |
| OPC UA | 2026年4月20日、430超のコンパニオン仕様をRAG/MCP対応形式へ変換する計画を発表 |
| AAS(Asset Administration Shell) | 2025年6月10日に Part 4「Security」仕様を公開。2026年4月にIDTA Research Hub Semiconductorをドレスデンに設立 |
| ISO 22400 | MESのKPI標準。umati / OPC 40501 が準拠したKPI算出に対応 |
ISA-95・OPC UA を踏まえたデータモデル設計から、実装経験にもとづいてお手伝いします。
ISA-95 2025年版は購入が必要ですか?
標準の本文はANSI Webstore等で有償販売されています。一方、ISA公式のプレスリリースは無料で読め、改訂の要点と委員会議長のコメントが記載されています。実務判断のための第一段階としては、公式リリースで十分です。
既存のISA-95準拠システムは作り直しが必要ですか?
必要ありません。Part 1 はモデルと用語の標準であり、既存実装を無効にするものではありません。影響が出るのは、これから新規設計するシステムのアーキテクチャ方針と、提案書における「標準準拠」という表現の解釈です。
- Update to ISA-95 standard addresses integration of enterprise and control systems(ISA、2025年4月10日)
- ANSI/ISA-95.00.01-2025 (IEC 62264-1 Mod)(ANSI Webstore)
- New ISA-95 standard enhances IT/OT convergence(Industrial Cyber)
- MESA Version 7 B2MML/BatchML Specifications(Automation.com)
- MTConnect Documentation(v2.5.0、2026年1月5日)
- Asset Administration Shell standard receives security specification(IDTA、2025年6月10日)
