定義──製造管理と品質管理の法的基準

GMP(Good Manufacturing Practice)は、医薬品などの製造所が守るべき製造管理および品質管理の基準です。出荷前の試験だけでは品質を保証できないという前提に立ち、「品質は工程で作り込む」ための組織・手順・記録・設備の要件を定めます。国際的にはWHOが1969年に勧告して各国に広がり、日本では医薬品医療機器等法に基づくGMP省令(平成16年厚生労働省令第179号)が根拠です。2021年8月1日施行の改正で、医薬品品質システム(PQS)、品質リスクマネジメント、データインテグリティといった国際整合の要求が明文化されました。日本は2014年7月にPIC/S(医薬品査察協定・査察協同スキーム)へ加盟しており、査察は実質的に国際基準で行われます。

誤解されやすい点──ISO 9001との決定的な違い

GMPは「品質管理の心構え」ではなく、違反すれば業務停止や承認取消につながる法的義務です。ここが任意規格であるISO 9001との決定的な違いで、認証の取得・返上を経営判断で選べるISOと異なり、GMP適用製品を製造する限り逃れられません。また「GMP=医薬品」と思われがちですが、医薬部外品、再生医療等製品のほか、食品分野のサプリメント、化粧品(ISO 22716)など、業界ごとに派生したGMPが存在します。米国FDAのcGMPの「c」はcurrent(現行の)の意味で、「規則の条文を満たすだけでなく、現時点の技術水準に見合った管理をせよ」という要求を含みます。紙の記録が主流だった時代の管理水準のままでは、この「現行性」を満たせなくなりつつあります。

実務でこの用語が出てきたら確認すべきこと

MESの提案・導入でGMPが出てきたら、最初に確認すべきは次の3点です。

  1. 適用範囲の特定──対象工場・対象工程のどこまでがGMP適用か。治験薬・輸出品・受託製造では参照すべき当局(PMDA/FDA/EMA)が変わります
  2. 電子記録の要件──監査証跡、電子署名、アクセス管理をどの規制(GMP省令、21 CFR Part 11、EU Annex 11)に合わせるか
  3. バリデーションの前提──MES自体がコンピュータ化システムバリデーション(CSV)の対象になります。工数とスケジュールに与える影響が非GMP案件とは桁違いです

「GMP対応MES」という製品表記は、これらを自動的に満たすという意味ではありません。対応は最終的に導入企業側の手順書と運用で完成します。

深く知る

GMPとGxPはどう違いますか?

GxPはGMP(製造)、GLP(非臨床試験)、GCP(臨床試験)、GDP(流通)など「Good x Practice」の総称です。MESが直接関わるのは主にGMPで、文書ではGxP全体の共通要求(データインテグリティ等)として語られることもあります。

GMP対応をうたうMESを入れれば査察は通りますか?

通りません。製品機能はあくまで部品で、査察で見られるのは自社の手順書・教育記録・バリデーション文書・運用実績です。機能要件と同時に、誰がどう運用するかの設計が必要です。