1年で起きたこと
まず一覧で確認します。金額はすべて公表値です。
| 案件 | 金額 | 時期 |
|---|---|---|
| Emerson → AspenTech 残り43%を取得 | 72億ドル | 2025〜2026年 |
| Schneider Electric → Cognite 買収合意 | 31億ドル | 2026年6月30日発表 |
| Schneider Electric → AiDASH 買収 | 3.5億ドル | 2026年 |
| TPG → GE Vernova の Proficy 事業を取得 | 6億ドル | 2026年3月6日クローズ |
| TPG → PTCの産業コネクティビティ/IoT事業(Kepware、ThingWorx) | 非開示 | 2026年 |
| ABB → Rotork 取得 | 55億ドル | 2026年 |
| SoftBank ← ABBロボティクス事業 | 53.75億ドル | 2026年 |
| 三菱電機(リード)→ Tulip シリーズD | 1.2億ドル | 2026年1月13日 |
さらに構造変化として、Honeywellが2026年6月29日に3社分割を完了し、純粋オートメーション企業「Honeywell Technologies」として再出発しています。
ケース1:Proficy → Velotic(MES業界で最大の再編)
2026年3月6日、GE VernovaがProficyソフトウェア事業をTPGへ6億ドルで売却しました。Proficyは2万社超の顧客を持つ製品です。GE VernovaはGridOS等のエネルギー転換ソフトへ集中する判断をしました。
そして2026年3月17日、TPGはProficyに、PTCから取得したKepwareとThingWorxを統合し、売上3億ドル超の独立系産業ソフト企業Veloticを設立しました。
ケース2:Schneider Electric × Cognite(31億ドル)
2026年6月30日、Schneider ElectricがノルウェーのCogniteを31億ドル(全額現金)で買収することに合意しました。Cogniteの2025年売上は1.7億ドル超、ARRブッキングは前年比36%成長です。CogniteのデータモデルとナレッジグラフはAVEVA CONNECTに統合されます。
AVEVAはすでにMESを「プラント中心の取引システム」から「CONNECTへデータを供給するデータプラットフォーム構成要素」へ再定義しており、現行v8/8.1でMESデータモデルの約80%をCONNECTへ発行できます。ARC Advisoryはこれを「MESが取引システムからデータプラットフォームの提供者へ移行する決定的なシフト」と評しました。
AVEVAを検討している場合、2027年Q1に予定されている大型CONNECTリリース(ナレッジグラフとTwin Builderを含む)が実質的な評価タイミングになります。
ケース3:三菱電機がTulipのシリーズDをリード(日本にとって最重要)
2026年1月13日、コンポーザブルMESの筆頭格である米Tulip Interfacesがシリーズドで1.2億ドルを調達し、評価額は13億ドルとなりました。リード投資家は三菱電機です。
Tulipは自社を「AIネイティブでノーコード、エッジ機能を持つプラットフォーム」と定義し、2025年実績として43,000アプリの展開、60,000名の現場作業者、45カ国1,000拠点を公表しています。
選定プロセスに何を追加すべきか
Verdantixのアナリストは2025年9月、「ベンダーの戦略的方向性を理解することが、ソフトウェア評価そのものと同じくらい重要になった」と述べました。実務に落とすと、RFPと評価シートに次の項目を足すことになります。
- 資本構造:直近3年の資本異動。PEファンド傘下に入った製品は、投資回収期間中のロードマップとライセンス方針を確認する
- 製品の位置づけ:買収された製品が、買い手のポートフォリオで中核なのか周辺なのか
- サポート体制の継続性:日本国内のサポート窓口・パートナーが再編でどうなるか
- ライセンス移行条件:サブスクへの移行時期と、既存永久ライセンスの扱い
- データの可搬性:ベンダーが方向転換した場合に、蓄積した製造データを取り出せるか
最後の項目は特に重要です。MESに10年ぶん溜まった工程実績は、企業にとって代替不能な資産です。ベンダーの戦略変更が、その資産へのアクセスを制約しない構造になっているかは、契約時に確認すべき事項になりました。
資本構造・ロードマップ・データ可搬性まで含めた評価シートの設計から、実装経験にもとづいてお手伝いします。
よくある質問
使っている製品のベンダーが買収されたら、すぐ乗り換えを検討すべきですか?
すぐの乗り換えは通常不要です。確認すべきは、サポート窓口と保守契約の継続条件、ロードマップの公表予定、ライセンス条件の変更有無、データのエクスポート手段の4点です。買収直後は情報が出ない期間が数ヶ月続くのが普通で、その間に慌てて動く必要はありません。
PEファンド傘下に入った製品は避けるべきですか?
一律には言えません。投資回収を急ぐ場合は価格改定やサポート縮小のリスクがありますが、逆に独立会社として投資が増える例もあります(Veloticは Proficy+Kepware+ThingWorx の統合でプロダクト投資を打ち出しています)。契約時にライセンス移行条件とデータ可搬性を固めておくことが、どちらに転んでも効く備えです。
- GE Vernova finalizes $600 million sale of Proficy software business to TPG(ARC Advisory)
- Velotic launches as an independent industrial software company(ARC Advisory)
- Schneider Electric to acquire Cognite(Automation.com、2026年6月30日)
- Honeywell Technologies launches as independent pure-play automation company(Honeywell、2026年6月29日)
- Tulip secures $120M Series D(Tulip、2026年1月13日)
- What recent multibillion industrial AI deals tell us about the market(Forbes、2026年8月7日)
- AVEVA World 2026: MES Perspective(ARC Advisory)
- Yokogawa's Shinji Oda named Chairman of OPC Foundation(Control Design)
