定義:材料から製品までの親子関係の記録

ジェネアロジー(Genealogy/系譜)は、製造の過程で「どの投入ロット(親)がどの産出ロット(子)になったか」という親子関係を、工程を通じて連鎖的に記録したデータ構造です。家系図(genealogy)の名のとおり、材料ロット→中間品ロット→製品ロット→出荷先という系図を形成します。

この系図があると、2方向の追跡が可能になります。

  • フォワードトレース(正方向):問題のある材料ロットから、それが使われた製品ロットと出荷先をすべて特定する(リコール範囲の確定)
  • バックワードトレース(逆方向):市場で不具合が出た製品ロットから、使われた材料・通った工程・条件を遡る(原因究明)

誤解されやすい点:トレーサビリティ=ジェネアロジーではない

両者はほぼ同義に使われがちですが、正確にはトレーサビリティが「追跡できること」という要件・能力であり、ジェネアロジーはそれを実現するデータ構造です。トレーサビリティには、ロットの親子関係のほかに、工程条件(温度・トルク)・検査結果・作業者・設備といった「そのロットに何が起きたか」の記録も含まれます。ジェネアロジーは背骨であって全身ではありません。

また、「MESを入れれば自動でジェネアロジーが取れる」というのも誤解です。系図は投入の瞬間に親ロットを特定する運用——バーコードスキャンによる投入記録など——があって初めてつながります。記録が切れやすいのは決まって同じ場所です。

切れやすい箇所起きること
複数ロットの混在投入(タンク・ホッパー)親が一意に決まらず「候補ロット群」になる
手直し・再投入正規フロー外で記録が抜ける
小分け・充填・再包装ロット番号の付け替えで系図が途切れる
外注工程社外での分割・統合が見えない

実務でこの用語が出てきたら確認すべきこと

  • 追跡の粒度をどこまで求めるか。ロット単位か、シリアル(個体)単位か。粒度を上げるほど記録コストが増えるため、規制要件と製品リスクから逆算します
  • 混在投入の表現方法。連続プロセスやタンクでは厳密な1対1の系図は不可能で、「この期間の産出はこのロット群が親」という時間幅での紐づけを許容する設計になります
  • 追跡にかかる時間の目標値。「追える」ことと「30分で追える」ことは別の要件です。リコール演習を想定した検索性能・帳票までを要件にします

よくある質問

ジェネアロジーはERPの在庫ロット管理と何が違うのですか?

ERPのロット管理は入出庫の単位としてロットを扱いますが、工程内での分割・統合・混合までは追いません。工程の中で親子関係がどう組み変わったかを記録するのはMESの仕事で、ここがジェネアロジーの核心です。

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