定義:工程の順序・場所・時間を定めたマスタ
ルーティング(Routing/工程表、工順)は、ある品目を製造するための工程の並び(順序)、各工程を行う作業場所(ワークセンター・設備)、標準時間(段取り時間・加工時間)を定義したマスタデータです。「切断→曲げ→溶接→塗装→検査」という流れと、それぞれをどこで・何分でやるかを表します。
ERPはルーティングをリードタイム計算と原価(加工費)計算に、APSは設備割付に、MESは作業展開——製造指図を工程ごとの作業指示に分解し、実績を工程単位で集める——に使います。BOMと結合することで「第3工程で部品Cを投入する」という実行レベルの定義が完成します。
誤解されやすい点:ルーティングは計画ではなく「レシピ」である
混同されやすいのは生産スケジュールとの関係です。ルーティングは「この品目はこう作る」という普遍的な作り方の定義であり、「今週この設備でいつ作るか」という日程はスケジューリングの出力です。ルーティング(静的マスタ)にスケジュール(動的情報)を混ぜて持たせると、マスタが日々書き換わる破綻した設計になります。
もうひとつの誤解は粒度です。ERPの原価計算には主要工程だけの粗いルーティングで足りますが、MESで作業指示・投入照合・品質記録を行うには、現場が実際に手を動かす単位まで細かく定義する必要があります。同じ「ルーティング」でもERP用とMES用で詳細度の要求が違うため、1つのマスタで両方を賄うか、MES側で詳細展開するかは設計判断になります。
| 観点 | ERPが求める粒度 | MESが求める粒度 |
|---|---|---|
| 目的 | 原価・リードタイム | 指示・実績・統制 |
| 工程数 | 主要工程のみで可 | 作業・検査の実行単位 |
| 付帯情報 | 賃率・標準時間 | 手順書・使用設備・検査項目・資格 |
実務でこの用語が出てきたら確認すべきこと
- 代替ルーティングの扱い。同じ品目を別の設備・別の工順で作れる場合の表現方法と、どちらを使ったかの実績記録。トレーサビリティと原価差異の両方に効きます
- 標準時間の鮮度。何年前に設定した値か。APSやOEEの基準になるため、MESの実績で定期的に更新する仕組みを持てるかが問われます
- 工程の飛ばし・順序逆転の統制。ルーティングどおりの順序を強制するか(工程スキップ防止)、例外をどう承認するか。規制産業では必須の論点です
よくある質問
ルーティングとワークフローは同じものですか?
違います。ルーティングはモノの製造工程の定義で、ワークフローは承認や文書の流れなど業務手続きの定義です。MES製品の資料では両方が「フロー」と表現されることがあるため、モノの流れか手続きの流れかを確認してください。
