定義──7原則12手順で構成される工程管理の枠組み

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point)は、原材料から出荷までの工程に潜む危害要因(生物的・化学的・物理的)を分析し、健康被害を防ぐうえで特に重要な工程を重要管理点(CCP)として定め、連続的に監視・記録する衛生管理手法です。1960年代の米国で宇宙食の安全性確保のために考案され、現在は国際的な食品規格を定めるコーデックス委員会の「食品衛生の一般原則」に組み込まれた、世界共通の枠組みです。骨格は7原則12手順──危害要因分析、CCPの決定、管理基準(CL)の設定、モニタリング方法の設定、改善措置の設定、検証方法の設定、記録の保存──に集約されます。日本では2018年の食品衛生法改正により、2021年6月から原則すべての食品等事業者に「HACCPに沿った衛生管理」が制度化されました。小規模事業者には業界団体の手引書に基づく弾力的な運用が認められています。

誤解されやすい点──認証ではなく、最終検査でもない

HACCPをめぐる混同は2つあります。第一に、HACCPの制度化は「認証取得の義務化」ではありません。日本の制度は自主的な衛生管理の実施と記録を求めるもので、FSSC 22000やISO 22000、JFS規格といった第三者認証とは別物です。認証はあくまで取引要件として顧客から求められるもので、法的義務ではありません。第二に、HACCPは最終製品の抜取検査を強化する話ではなく、工程の連続監視で不良品の発生自体を防ぐ発想です。だからこそ記録が本体になります。加熱温度・時間、金属検出機の作動確認、冷却温度──これらのモニタリング記録と逸脱時の改善措置記録が残っていなければ、「やっているつもり」と区別できません。紙の記録は転記ミス・記入漏れ・後追い記入という弱点を抱えており、ここがMES・電子記録システムの出番になります。

実務でこの用語が出てきたら確認すべきこと

  • CCPと管理基準の確定状況──電子化の前提として、危害要因分析が済み、CCP・CL・モニタリング頻度が文書化されているか。ここが未整備のままシステムを入れても監視画面の置物になります
  • 自動記録できる測定点──殺菌温度・時間などセンサーから自動収集できるCCPと、目視確認など人の記録が必要な点の切り分け。自動化できる点から電子化すると効果が出やすくなります
  • 逸脱時のフロー──CLを外れたときの隔離・判定・再発防止のワークフローをシステムでどう統制するか。ホールド(出荷保留)管理との連動が実装の要点です
  • 記録の保存と提示──保健所の監視指導や顧客監査で、対象ロットの監視記録を即座に提示できる検索性があるか

深く知る

HACCPとトレーサビリティは同じものですか?

別物です。HACCPは工程の安全管理、トレーサビリティはロットの追跡可能性で、目的が異なります。ただし回収時にはHACCPの逸脱記録とロット追跡を突き合わせるため、実装上は同じ基盤(MES)に載せると効果的です。

HACCP対応にMESは必須ですか?

必須ではありません。紙でも制度要件は満たせます。MES化の価値は、記録の信頼性(後追い記入の排除)、逸脱時の即時アラート、監査対応の検索性にあり、記録点数が多い工場ほど投資対効果が出やすくなります。